以徳報怨 2016 6 19

書名 毛沢東
著者 遠藤 誉  新潮新書

 早速、この本から興味深いところを引用しましょう。
以下は、引用です。
 1945年8月15日、「終戦詔書」と呼ばれる天皇陛下の玉音放送があった1時間前に、
蒋介石は、「抗戦勝利にあたり全国軍民および全世界の人々に告げる書」という勝利宣言を、
重慶の中央放送局から中国全土と全世界に向けて放送した。
 この中で、8年間にわたって中国人が受けた苦痛と犠牲を回顧し、
これが世界で最後の戦争となることを希望するとともに、
日本人に対する一切の報復を禁じた。
いわゆる「以徳報怨(怨みに報いるに、徳を以ってせよ」と言われる演説である。
(中略)
 その後、約1年間にわたる元日本軍の復員と日本居留民の引き揚げ作業が優先的に行なわれた。
このために、国民党軍の移動や物資補給に必要な列車や船を総動員したため、
終戦後に始まる国共内戦に対して、スタート時点で、
国民党軍は、中共軍に遅れを取ってしまう。
(中略)
 蒋介石には、不利な状況が重なっていた。
戦時中、アメリカのルーズベルト政権内では、
コミンテルンのスパイが暗躍し、
延安で毛沢東に会い、毛沢東を絶賛したジャーナリストたちが影響を及ぼしていた。
 そのため、ルーズベルトは、
完全に「共産党陣営」の虜になっていたのだ。
(引用、以上)
 ホワイトハウスが共産主義化してしまった点については、
「ベノナ文書」が参考になるでしょう。
「べノナ」文書(米軍諜報部が解読した旧ソ連情報部の秘密文書)
(以下は、ウィキペディアから引用)
 1995年、ベノナ(ソ連暗号解読プロジェクト)が機密扱いをはずされ、
ソ連の暗号通信の内容が明らかになった結果、
ソ連のスパイ行為は、マッカーシーの見積もりよりも、
さらに大規模なものだったことが判明している。
 ベノナは、特にソヴィエトのスパイに色々な方法で協力した、
合衆国の市民、移民、そして永住者を含む少なくとも349人の人々について言及している。
 マッカーシーは、ベノナ秘密情報への接触はなく、
彼の情報は他の情報源からだと信じられている(FBIのフーヴァー長官からだという)。
 ベノナは、マッカーシーにより調査された、
ある人物達が、事実、ソ連のスパイであることを明らかにしている。
 たとえば、メリー・ジェイン・キーニーは、
マッカーシーにより単に「共産主義者」とされているが、
実際には、彼女も、その夫もソ連のスパイだった。
 マッカーシーにより名指しを受けたロークリン・カーリーは、
ルーズヴェルト大統領の特別顧問だったが、
ベノナによりソ連のスパイであることが確かめられた。
(引用、以上)
 マッカーシー(1908〜1957)は共和党の上院議員で、
1950年に国務省に潜む共産党員の名簿を入手したと発言し、
一躍、世界の注目を浴び、
彼の反共産主義運動は「マッカーシズム」と呼ばれました。
(参考文献 ジョセフ・マッカーシー著「共産中国はアメリカがつくった」)

大義のために 2015 8 23

2015年8月2日の時事通信社には、このような記事がありました。

 日本との戦争の最終局面の1945年6月、
当時の中国を統治した中華民国・国民政府が作成した、
日本人戦犯リストのトップに「日皇裕仁」(昭和天皇)が掲げられたが、
終戦直後の9月のリストからは消えていたことがわかった。
 蒋介石主席の意向で決まったもので、
連合国・米国に追随する方針のほか、共産主義の拡大防止という背景があった。
(引用、以上)
 たとえ「共産主義の拡大防止」という大義があったにせよ、
蒋介石は悔しかったと思います。
 日本軍との戦いで、
蒋介石が率いる国民党軍が消耗していて、
これが、結果的に、
毛沢東が率いる共産党軍に勝利をもたらすことになったからです。
 戦後、昭和天皇は、蒋介石の行く末を案じていたとされ、
これが、当時の佐藤首相にも影響を与えたと言われています。
(2015年7月30日の時事通信社の記事)
 大義があれば、たとえ敵味方に分かれて戦っても、
多くの人から尊敬を受けるのが、歴史の常です。
 しかしながら、こうした大義があっても、
アメリカのホワイトハウスや国務省は、
共産主義者に乗っ取られていましたので、
蒋介石の大義は、誠に残念なことになってしまいました。
(「ベノナ文書」を参照。
あるいは、ジョセフ・マッカーシー著「共産中国はアメリカがつくった」を参照)
 国際政治の激流によって、
蒋介石の大義は消えてしまいましたが、
たとえ、歴史が、その大義を評価しなくても、
神は、評価するでしょう。


















































































































トップページへ戻る